【肥満が招く様々な病気とリスク:肥満の予防と解消法】
2023/12/09
目次
肥満とは
<生活習慣病の原因になる「肥満」>
「肥満」とは、必要以上の脂肪が体に蓄積している状態のことをいいます。
一般的にBMI(Body Mass Index:体格指数)を用いて判定され、BMI25以上は肥満とされています。
肥満の主な原因は「食べ過ぎ」と「運動不足」です。
肥満は、高血圧や糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病のもととなるため、放置せずに、食生活の見直しや運動習慣をつけるなどの対処が必要です。
中年期以降の方の場合、「昔と食事量が変わっていないのに最近太ってきた…」とお悩みの方も多いかと思いますが、その原因は基礎代謝の低下が考えられます。
加齢とともに基礎代謝や筋肉量は減少、若い頃に比べ運動量も落ちるためさらに代謝量は低下します。
基礎代謝が低下した状態で昔と変わらない食事量を摂ると「カロリーオーバー = 食べ過ぎ」になり、それが続くとやがて肥満となってしまいます。
また「肥満」に伴い、以下の「肥満による11種の健康障害(合併症)」や、これら合併症になるリスクが高い場合、「肥満」ではなく「肥満症」と診断され、医学的な減量治療の対象となります。
【肥満による11種の健康障害(合併症)】 ※ 日本肥満学会
1、耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
2、脂質異常症
3、高血圧
4、高尿酸血症・痛風
5、冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
6、脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作(TIA)
7、脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患/NAFLD)
8、月経異常・不妊
9、睡眠時無呼吸症候群(SAS)・肥満低換気症候群
10、運動器疾患:変形性関節症(膝・股関節)・変形性脊椎症・手指の変形性関節症
11、肥満関連腎臓病
※肥満症の定義
BMIが25以上で、「肥満による11種の健康障害(合併症)」が1つ以上あるか、腹囲が男性なら85cm以上、女性なら90cm以上である場合
<体脂肪の役割>
体脂肪とは体につく脂肪のことで、生きていく上で体に欠かせない大切な組織です。
何かと邪魔者扱いされている「体脂肪」ですが、一体何のために体に存在するのでしょうか?
体脂肪の役割は、下記の通り主に3つあります。
①栄養を蓄える貯蔵庫
栄養をエネルギーとして貯め込み、いざという時に使用できるようにする
②体温を守る保温効果
外気を遮り体温を一定に保つ効果がある
③衝撃や圧力から体を守る
体が受ける衝撃や圧力をクッションのような役割で受け止めてくれる
肥満の種類
体脂肪は大別すると「皮下脂肪」と「内臓脂肪」の2つにわかれます。
また、それぞれの脂肪のつきかたで肥満の種類を以下の2つにわけることができます。
<皮下脂肪型肥満>
皮膚の下の組織に蓄積される「皮下脂肪」が多いのが「皮下脂肪型肥満」です。
皮下脂肪はお尻や太ももなどの下半身を中心に、下腹部などのお腹周辺につきやすいので下半身太りの体型になります。
また、体を覆うようにつくためスタイルの維持に影響します。
一般的に「つきにくく落ちにくい」性質で、男性よりも女性につきやすいのが皮下脂肪の特徴です。
<内臓脂肪型肥満>
一方、お腹の内臓まわりに蓄積される「内臓脂肪」が多いのが「内臓脂肪型肥満」です。
内臓脂肪が多いと、中年男性に多いぽっこりお腹の体型になります。
一般的に「つきやすく落ちやすい」性質で、女性よりも男性につきやすいのが内臓脂肪の特徴です。
内臓脂肪は増え過ぎると健康リスクが高まり、様々な生活習慣病の原因となります。
内臓脂肪が蓄積され、生活習慣病が進行すると、やがてメタボリックシンドローム(メタボ)を招きます。
命にかかわる疾患を引き起こすリスクが高く、内臓脂肪を早急に減らす対策が必要です。
肥満の判断方法
<BMIで見る肥満の目安>
肥満を判断するためには、BMIという国際的な標準指標を用いるのが一般的です。
BMIとは、身長に対して体重が重いのか軽いのかを表した数字です。
標準とされるBMIは男女ともに「22」ですが、これは統計上、肥満との関連が強い糖尿病や脂質異常症・高血圧に最もかかりにくい数値とされています。
そのため、標準体重(適正体重)はBMI22を基準として計算されます。
ちなみに、BMIは身長と体重から単純に算出された値なので、BMIだけでは筋肉質なのか脂肪過多なのか区別できないこともあります。
BMIは標準だとしても筋肉や骨と比べて脂肪が多いケースや、極端に筋肉量が多いことでBMI判定が肥満になることもあります。
また、同じBMIだとしても、先述の「皮下脂肪型肥満」か「内臓脂肪型肥満」か、つまり脂肪が蓄積されている場所によっても健康へのリスクは異なります。
【BMIの計算方法】
BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))
◆例:身長160cm・体重55kgの場合
「55÷(1.6×1.6)=約21.5」
この方のBMIは約21.5となります。
【肥満の判断基準】 ※ 日本肥満学会
BMI | 判定 |
18.5未満 | 低体重 |
18.5以上25未満 | 普通体重 |
25以上30未満 | 肥満(1度) |
30以上35未満 | 肥満(2度) |
35以上40未満 | 肥満(3度) |
40以上 | 肥満(4度) |
<体脂肪率で見る肥満の目安>
肥満を判断する方法でBMIに次いで一般的なのが「体脂肪率」です。
体脂肪率とは、体内での脂肪の占める割合を数字で表したものです。
最近では、量販店に並んでいる体重計の中に体脂肪率を計測する機能が搭載されている体組成計があり、一般家庭でも簡単に計ることができる身近な存在になっています。
一般家庭用に販売されている体組成計は、体に弱い電流を流して、その抵抗を計測することで体脂肪量を判断するという仕組みになっています。
しかし、メーカーによって判定基準が異なることがあり、一定の誤差が生じます。
また体内の水分量等でも同じく誤差が生じることがあります。
体脂肪率の正確な測定は困難であるため、目安のひとつとして、測定値の増減を把握しましょう。
【肥満の判断基準】 ※体脂肪率
男性 | 女性 | |
プロアスリートなど 極限まで絞った体 |
9%以下 | 15%以下 |
引き締まった体 | 10〜14% | 16〜22% |
標準的な体 | 15〜19% | 23〜29% |
軽度の肥満 | 20〜24% | 30〜34% |
中度の肥満 | 25〜29% | 35〜39% |
重度の肥満 | 30%以上 | 40%以上 |
注意すべきメタボリックシンドローム
メタボリックシンドローム(メタボ)とは、別名「内臓脂肪症候群」といわれ、内臓脂肪の蓄積に加え、「高血圧」「高血糖」「脂質代謝異常」のうち2つ以上を併発している状態のことを指します。
メタボリックシンドロームは動脈硬化の危険因子が重なっているため、それぞれの症状が軽くても心筋梗塞や脳梗塞など、命にかかわる疾患を引き起こすリスクが高く要注意です。
食事の見直しや運動療法など、減量計画を早急に立てることが必要です。
【メタボの診断基準】
腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上に加え、以下のいずれか2つ以上に当てはまる場合
高血圧 | 130/85mmHg以上 |
高血糖 | 空腹時血糖値が110mg/dl以上 |
脂質異常症 | HDLコレステロールが40mg/dl未満 中性脂肪が150mg/dl以上 |
肥満が招く様々な疾患や悪影響
肥満が原因となる主な疾患として、高血圧や糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病が挙げられます。
また体が重くなること自体にも問題があります。
腰や膝に負担がかかり腰痛や膝痛などの関節障害を起こしやすくなります。
その痛みをカバーするために他の場所に負担をかける動作をしてしまうなど、悪循環を招きます。
さらに体脂肪によって内臓や気管を圧迫して、正常な働きに影響を与えるほか、呼吸に支障をきたす場合もあります。
<肥満が原因となる主な疾患>
【高血圧】
高血圧と聞くと、原因のひとつとして「塩分の摂り過ぎ」というイメージが強いかと思いますが、最近では肥満が原因での高血圧が増えています。
肥満によって「インスリン」というホルモンが、過剰に分泌されてしまうことが原因だと考えられています。
本来、血糖値を一定に保つ役割があるインスリンですが、肥満により効き目が悪くなり、それを補うために体はさらに分泌してしまいます。
血液中のインスリン濃度が高くなると、ナトリウムの排泄機能の低下が起こったり、血管が収縮したりすることで血圧が上がってしまいます。
高血圧は自覚症状がほとんどない為、健康診断などで毎年チェックすることが大切です。
【糖尿病】
糖尿病は高血糖の状態が慢性的に続く状態のことです。
糖尿病を発症すると、以後ずっと病状と付き合う生活になってしまう為、日頃から予防するなど注意が必要です。
糖尿病は高血圧と同じく、インスリンの働きが関係しています。
体脂肪の増加によりインスリンの効き目が悪くなり、それを補う為にインスリンが過剰に分泌されてしまいます。
この状態が続くと、インスリンを分泌するすい臓が疲れてしまいます。
すると次第にインスリンの分泌量が低下して、血液中のブドウ糖が使われず留まってしまい、高血糖の状態になってしまいます。
【脂質異常症】
脂質異常症は、血液中の脂質濃度が基準範囲にない状態のことで、食事から摂取する脂質が多過ぎることや、脂肪細胞に脂質が溜まり過ぎると発症しやすくなります。
通常は善玉コレステロールと悪玉コレステロール、中性脂肪がバランス良く血液中に存在していますが、体脂肪が増えると善玉コレステロールが減り、中性脂肪が増えてしまい脂質異常症の原因となります。
脂質異常症は動脈硬化につながるリスクの高い状態です。
【動脈硬化】
動脈硬化は、動脈の血管が硬くなって詰まりやすくなってしまった状態のことを言います。
前述の高血圧・糖尿病・脂質異常症の先には動脈硬化といったリスクが待っています。
それぞれ脳の血管が詰まると「脳梗塞」、心臓であれば「心筋梗塞」を引き起こし、死亡リスクが高まります。
【その他】
がん・生理不順や不妊・認知症・睡眠時無呼吸症候群など
肥満にならないために!予防と解消法
肥満によって引き起こされる病気のリスクを下げるためには、減量をする必要があります。
これまで「肥満は遺伝」という意見がありましたが、最近では生活環境との関係性に注目されています。
肥満の原因は消費カロリーよりも摂取カロリーが多いことにあります。
肥満家系においても、遺伝のみならず、食生活や運動習慣・活動習慣などが共通していることが肥満の原因と考えられます。
ここでは、肥満にならないための予防法と解決法をポイント別で確認してみましょう。
<食事編>
【1日3食規則正しい食事】
「朝食を食べない」などの欠食や「毎日の食事時間がバラバラ」という方は生活習慣を整えることから始めましょう。
1日3食、バランスの良い食事を心がけることで体脂肪が蓄積されるリスクを下げることができます。
極端に少ない食事や、糖質や脂質など特定の栄養素を制限するダイエットは、体に負担がかかりリバウンドのリスクも高まります。
必ず「バランスの良い食事」を「適量食べる」ことを意識しましょう。
【たんぱく質を意識した食事】
たんぱく質は筋肉や骨をはじめ、血液や臓器など、様々な細胞を作る材料となります。
食事をしたあとは、摂取した栄養素が分解されるため、代謝量が増えてエネルギー消費が行われます。
このエネルギー消費のことを「食事誘発性熱産生」といいます。
食事誘発性熱産生は各栄養素で異なり、たんぱく質が最も高いことがわかっています。
AさんとBさんはたんぱく質を含めた各栄養素の摂取量が異なります。
全体の摂取量2000kcalのうち、Aさんのたんぱく質摂取量は200kcal、Bさんは600kcalです。
この2人の食事誘発性熱産生を比較すると、Bさんの方がたんぱく質の摂取量が多いため、約96kcal多くエネルギー消費してくれます。
たかが96kcalですが3ヶ月続けば約8640kcalになり、これを体脂肪に換算すると約1.2kgになります。
※1日2000kcal摂取する場合
Aさん | Bさん | |
たんぱく質(約30%) | 200(60kcal) | 600(180kcal) |
脂質(約4%) | 450(18kcal) | 450(18kcal) |
糖質(約6%) | 1350(81kcal) | 950(57kcal) |
合計 | 2000(159kcal) | 2000(255kcal) |
【食物繊維を多めに摂る】
きのこ類や葉物野菜、豆類や海藻類には食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維は血糖値の上昇を抑え、胃を膨らませる効果があります。
腸内環境を整える役割や便秘改善効果もありますので積極的に摂取しましょう。
【よく噛んで食べる】
食事をする時は決して早食いをせず、ゆっくりよく噛んで食べることが重要です。
早食いをすると、満腹感を感じる前に必要以上に食べ過ぎてしまいがちです。
よく噛んで食べることで胃腸の負担を減らし、効率良く消化吸収ができます。
<運動編>
【有酸素運動】
肥満の予防や解消には食事だけでなく、運動も合わせて行うとより効果的です。
ウォーキングなどの有酸素運動は脂肪燃焼効果があり、道具も不要なため手軽に取り組めます。
有酸素運動をすることで、体脂肪をエネルギーに変え効率的に消費してくれます。
1日に30分程度の運動でも、それを続けることで太りにくい体へと変化していきます。
まとめて運動をする時間が取れない場合は、1日10分のウォーキングを数回くり返し行う方法でもokです。
まずはそれぞれのライフスタイルに上手く運動を取り入れること、そして負担にならない範囲内で無理なく「続けること」が大切です。
【筋トレ】
体内の筋肉量が増えると基礎代謝量がアップして、エネルギーを効率良く消費してくれます。
つまり、「脂肪がつきにくい太りにくい体になる」ということです。
筋トレをする時は、太ももやお尻などの下半身を中心に大きな筋肉を鍛えることで、より効果的に全身の筋肉量アップが期待できます。
自宅でできる筋トレとして、まずはスクワットや腹筋運動から始めてみましょう。
有酸素運動と同じく、無理なく「続けること」が大切です。
「テレビを見ながら」「掃除をしながら」など、できることを続けましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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